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探してたあの人

おひるね ちゅっ!/YUG

Twin Walk

「はい、柏木です。―あ、はるかちゃん。…今日これから?…ごめんわたし、今日もちょっとやる事があって……うん。」

私は柏木ことの。ある賞へ投稿するための少女まんがを描いてます。
〆切はもうすぐ。今度こそ入賞できるような作品を描かないと。

…でも、今ちょっとスランプ中なのです。
ラストの主人公の表情が、全然うまく描けなくって――

はるかちゃんのお誘いも断って、また原稿に向かいます。いざ描こうとしたときに、窓からなにかが入ってきました。桜の花びらです。
机に手をついて窓を閉めようとしたのですが―ついうっかり、原稿にインクをこぼしてしまいました。
「大変…!」
もう…!何やってんだろ、わたし。


「ったくホントになーにやってんだか」
「う~ごめんごめん…」
うう。怒られてしまいました。ごめ…あれ?

「…まったくも~~あなたって前からかなりドジだって思ってたけどぉ、今回はもうアキれちゃったわっ」
机の上に立つその女の子は腰に手をあてて、ため息をつきました。制服の上着と髪の毛に、私がこぼしたインクがついています。
「…聞いてる?」
その怒った口調に、わたしはあわてて首を縦に振ります。
こ…こんなことって――
急いで完成させなきゃならない原稿から、よりによって主役が出てきちゃうなんて…!
…しかも出てきた反動からか――性格がまるで正反対になっちゃってるみたい。

「どう?おちた~~?」
わたしは汚してしまったちっちゃな制服を洗っています。彼女はその間、絵の具バケツのお風呂に入っています。
「そうそうこの前私の上でさぁ、いねむりされた時もまいったのよね~~」
おぼれるかと思ったし、という彼女の言葉に私は顔を赤くしました。
…とにかく早く戻ってもらわないと。

「あの…元に戻るのって…」
お風呂からあがった彼女に問いかけます。
彼女は、ふ~、と深く息をはいた後で、微笑みながらこう答えました。
「………それは、出したあなたが考えてよね」
……どうしよう。

「ま、それよりさ!せっかくこっちに来れたことだし―――」

「へえーーーっ、こっちの世界ってステキじゃな~い!」
私は彼女を肩に乗せ、散歩に出かけることになりました。―私以外には見えないんだ…
もう…こんなことしてる暇無いのに―――
それでも、白黒の世界に生きている彼女からすればこの世界はとても新鮮なようで、いろいろなものに興味を示します。
私たちは彼女の好奇心のままに、いろんなところを歩き回りました。
…そういえば、こんなふうにのんびり外を歩き回るのって、けっこう久しぶりかもしれないなあ。
――でもこれって今は、ただの現実逃避って気がしちゃう――

「え~~っ、じゃあ…ことのにとってこれは、現実じゃないってゆーか…ムダなことなの?」
肩に乗る彼女がそう言った。眠たそうにあくびをしながら。
「あ…ううん、そんなこと…」
「…せーーっかく私が気効かせて――あ、いや」



YUG先生はとても不思議なマンガを描く人だ。
日常を舞台にした作品が多いのに、少しだけ加えられたファンタジーの要素で作品をふわっとまとめあげる。おなじくふわふわと柔らかなタッチで描かれた女の子と、ゆっくりと流れる空気の感触。そういうものが一体となって、優しいストーリーを作り上げる。
画集「おひるね ちゅっ!」は、2002年に発売された「おひるね」(現在絶版)のリニューアル作品。イラストの完全再集録に加え、デビュー初期のコミック6作品が加わった贅沢なイラスト集だ。カラーページとモノクロページが約半々、といったところ。
このコミックはまさにYUG先生の代表作ともいえる出来で、優しく描かれた世界が隅々にまで広がっている。ときには甘く、ときには酸っぱく。ふわふわとした世界の中で、ゆったりとストーリーが紡がれていく。

そしてもうひとつ。YUG先生の作品には、サイズを題材にした作品がかなり多い。食べ物を題材にした女の子のイラストや、鉛筆や消しゴムなどの静物が置かれた机に座る女の子など、しばしば小さく描かれた女の子が登場する。
このイラスト集にも『セーラー服探検隊』というカラーイラストが収録されており、タイトルの通り眠っているセーラー服の女の子の身体を同じくセーラー服を着た女の子たち(クラスメイトかな?)が探検するという直球の内容だ。正直、このイラストのためだけに画集を買ってもいいくらいの素晴らしい出来。


前置きが長くなったが、今回取り上げた『Twin Walk』も小さな女の子が登場するマンガだ。もっとも、マンガから飛び出してきた女の子という位置づけなのでswかどうかは微妙なラインだけど。もともといたマンガの世界が『彼女』にとって等身大のサイズだったので、疑似的な縮小娘ものに…なるかな?
人形のような大きさの『彼女』はことのにしか見えず、『彼女』に外の世界を教えることでことの自身もなにかを得る―というストーリーなのだけど、実際には『彼女』はインクのにおいが残っているようで、子犬に追いかけられるシーンがある。かわいい。
全体を通して小人視点のシーンは少ないものの、小さくてちょっと生意気なパートナーの細かなしぐさを眺めているのは飽きないし、心がほっこりする。実は途中からあるものを使ってことのと同じ大きさになるのだけど―トリックは読んでのお楽しみ。
この話自体はもともとアダルト誌『快楽天』に掲載されたものだが、ストーリー自体に性的な描写は無い。お風呂や下着のシーンはあるものの、全年齢向けといって差し支えないんじゃないかな。

このコミックそのものも全年齢向け。YUG先生自身はアダルト誌でお仕事をされることも多いようで、この作品にも快楽天が出典のものも多いけど、先生の作品でストレートに性的描写を描いたものは見たことが無い(私は)。
むしろ、日常に潜むほのかなエロスを柔らかく描いているのが個人的には好みかな。ぜひこの路線で活動していってほしいところ。

リニューアル版とはいえ、出版されたのがすでに10年前なのでやや手に入れにくい作品ではある。Amazonでは中古として取り扱っているみたい。
おひるね ちゅっ! YUG: http://www.amazon.co.jp/dp/4898297765/ref=cm_sw_r_tw_dp_BI5Qvb1N7PPAV


惜しむらくは、YUG先生の作品は掲載誌によってはコミックとして入手が困難なものも多く含まれるということ。
先に挙げた食べ物の擬人化集『でりしゃすが~るず』にしてもそうだが、いまとなっては入手する方法が絶えてしまったものも多く存在する。…いつかまたこういう形でまとめてもらえると嬉しいのだけど。
個人的には、快楽天で連載されていた『でりしゃすあどべんちゃーず』が読みたい。擬人化されたアリが主人公の作品で、ストレートにサイズ描写が多い隠れた名作。
コミック化もされているのだけど…もはやどこにも売ってないんだよなあ。
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2015年上半期まとめ② (ツイッター抜粋+α)

前回のつづき。他の方から教えていただいた情報も含まれています。ありがたや~。
毎度のことだけど、情報量がやや多めなので解説があっさり気味。
詳細について知りたいものがあれば、コメント欄なりツイッターなりで質問いただければお答えいたします。

(以下、折りたたみ)

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