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ルー・フェイの伝説

マジック・ツリーハウス/著・メアリー=ポープ=オズボーン 訳・食野 雅子 イラスト・甘子 彩菜 (日本語版)

ジャックとアニーは、ペンシルベニア州フロッグクリークに住む、仲よし兄妹。
ふたりは、ある日、森のカシの木のてっぺんに、小さな木の小屋があるのを見つけた。中にあった恐竜の本を見ていると、とつぜん小屋がぐるぐるとまわりだし、本物の恐竜の時代へと、まよいこんでしまった。この小屋は、時空を超えて、知らない世界へ行くことができる、マジック・ツリーハウス(魔法の木の上の小屋)だったのだ。
ジャックたちは、ツリーハウスで、さまざまな時代のいろいろな場所へ、冒険に出かけた。やがてふたりは、魔法使いのモーガンや、モーガンの友人マーリンから、特別な任務をあたえられるようになった。そして、魔法と伝説の世界の友だち、テディとキャスリーンに助けられながら、自分たちで魔法を使うことも学んだのだった――。


(以上、31巻 【これまでのお話】より全文抜粋)


29巻 ふしぎの国の誘拐事件

ジャックとアニーは1862年のアイルランド、ゴールウェイ州に来ていた。二人が探しているのはオーガスタという想像力豊かな女の子。今度のジャックとアニーの役目は、彼女の素晴らしい才能を本人に気づかせて、世界中の人を感動させられるようにすることだ。
それに、今回もキャスリーンが魔法のアイテムを二人に渡してくれた。アイルランドに古くから伝わる縦笛の形をした、ふしぎな魔法の笛。吹けば自然にメロディーが流れ、それに合わせて歌えば歌詞の通りのことが起こる。ただし、使えるのは一度だけ。
ジャックはその笛を古ぼけたオーバーのポケットにしまい、オーガスタの住むお屋敷を目指して、雨の降る真冬のアイルランドを歩いていた。


ところが実際に会ってみると、オーガスタは空想を一切認めない女の子だった。みすぼらしい服を着た二人を助けてくれたまではよかったんだけど、その親切な行動とは裏腹に、貧しい者を見下しているような言動が目立つ。挙句の果てには、二人がシェークスピアの舞台に立ったことや、文字が書けることすら信じようとしない。
これにはさすがのジャックも腹を立てて、ついに口げんかになってしまった。オーガスタも、戸惑いつつも自分の考えを曲げようとしない。
怒ったオーガスタは自分がどんな人間か証明するために、二人をある老婆に引き合わせることにした。メアリー・シェリダン―オーガスタの乳母で、ちょっと頭がおかしいと思われているその人に。

メアリーとの話はとっても楽しかった。彼女はアイルランドの妖精も、古くからの伝承も、そしてジャックとアニーの語る話もすべて信じていた。彼女には妖精が見える。ほかのみんな―教育を受けた人たちが、作り話と言い切る存在が見えるのだ。
だけど、オーガスタには妖精が見えなかった。ほかの誰よりも、その存在を信じていたのに。
慣習に縛られ、森で遊ぶことも本を読むことも禁じられた少女は、いつしかその存在を否定するようになった。
せっかくオーガスタには素晴らしい才能が―人々におとぎ話を語り継ぐ才能があるのに!


だからジャックとアニーはひと芝居打つことにした。メアリーの語ってくれたお話をもとに脚本を作り、魔法の笛にあわせて歌うことでオーガスタの前に妖精を呼び出すんだ。
かつてウィルが―ウィリアム・シェークスピアが二人に教えてくれたように。
演題はもちろん、【真夏の夜の夢】…ではなく、【真冬の昼の夢】。森のそばの川べりで、アニーが笛を吹きジャックが自作の詩を朗々と歌う――

地ひびきとともに 妖精たち
橋をわたって やってきた
白馬に乗った一団に 羽の生えた花の精
王冠をかぶった 王さまと女王さま


強い風、あふれる光。列をなして現れた妖精たちに、オーガスタはすっかり夢中になっていた。
「妖精だわ!ほんものの妖精だわ!」
ジャックも胸を高鳴らせ、ついに最後の節を歌いあげた。

まわるまわる 妖精たち
秘密のすみかへ 引きあげる
ひとりぼっちの女の子
光のうずに巻きこんで


「お兄ちゃん、だめ!」
あわててアニーが叫ぶ。だけどもう、止めることはできなかった。
歌の通りに光の渦が巻き起こり、強い風が過ぎ去った後には妖精はすべていなくなっていた。
ひとりぼっちの女の子―オーガスタを連れて!


困り果てる二人。するとそこに、小さな妖精・レプラコーンのウィリーが現れた。二人はなんとか彼を説得し、妖精のすみかへの案内を頼む。古い森を進み、いばらの茂みを抜け、ついには地底にある妖精の宮殿にたどり着いた。
身をかがめてそっと宮殿の扉を開ける。楽隊に合わせてに踊る妖精たち。そのなかに、赤いマントを羽織った女の子がいた。

「ああ……、オーガスタが、あんなに小さくなっちゃってる!」
楽しそうにダンスを踊るオーガスタ。だけどその大きさは、20センチくらいしかなかった。

ジャックもアニーも、もう魔法の力は使えない。もし失礼な態度を取れば、こっちが妖精の魔法でブタに変えられてしまう。
それでも二人は、妖精の王さまを、そしてオーガスタ本人を説得して地上に連れ帰さなくちゃいけない。
もちろん、元の大きさで!




31巻 インド大帝国の冒険

ジャックは緊張した面持ちで、ディワーネ・ワームの玉座の前に立っていた。
緊張の原因はいくつもある。ひとつは男の子の格好をして隣に立っているアニー。いまはジャックの弟のふりをしているけど、女の子だってことがばれたらただではすまないだろう。
この時代―十七世紀のインド、ムガル帝国の女性は、人前で顔を見せることは固く禁じられているからだ。

それに、今回の冒険は絶対に失敗しちゃいけない。テディが魔法の失敗で石にしてしまったペンギンのペニーを自分たちの力でもとに戻すためには、皇帝の持つバラのエメラルドがどうしても必要なのだ。
モーガン先生やマーリン先生ならペニーをもとに戻せるんだろうけど、あいにく二人とも留守。それにマーリン先生が戻ってきたとしても、テディがお咎めなし、ってことにはならないだろう。最悪の場合、テディは王国を追放させられてしまうかもしれない。

そしてなにより、目の前の玉座に座っている冷たい雰囲気の人物が、ジャックを極限まで緊張させていた。
ムガル帝国第五代皇帝、シャー・ジャハーン。偉大な皇帝の前ではいかなる無礼も許されない。作法を間違えれば厳しく罰せられ、この場で処刑されてもおかしくないのだ。
無表情の大人たちに囲まれながら、ジャックはことが無事に過ぎ去るのをただひたすら待っていた。


意外なことに、それは上手くいった。皇帝はジャックの【贈り物】を受け取り、二人はご褒美にバラのエメラルドを貰うことができた。なにもかもが順調で、後はフロッグクリークに帰るだけ!
……とはならなかった。皇帝陛下のお招きで、使節団はゾウのパレードを見学しなくてはいけないのだ。もちろん、断ることなど許されない。
ジャックがため息をついていると、アニーが言った。
「ゾウのパレードなんて、めったに見られないのよ。お兄ちゃん、見てみたくないの?」
はしゃぐアニーとは対照的に、ジャックはもう気が気でなかった。
「フロッグクリークでなら見てみたいよ。だけどここは、ちょっと礼儀に反しただけで処罰されるような国だぞ。パレードなんか見たって、楽しめるわけないじゃないか」
「だいじょうぶよ。わたしたちはただ見るだけだもの。何もおこらないわよ。それに何かあったら、魔法の秘薬を飲んで逃げればいいんだから。」
あっけらかんと笑うアニー。アニーが言っているのは、冒険の前にテディに貰った、からだが小さくなる水のことだ。魔法は時間が経てば自然に解ける。ひと口で十分、ふた口なら二十分、三口なら三十分。
…でも小さくなっている間なにも起こらないなんて、どうして言い切れるだろう?かつて妖精の魔法で小人にされてしまったオーガスタのことを思い出すと身震いがする。
「アニーは、よっぽど小さくなりたいんだな!」
ジャックはやけくそになって叫んだ。


そこから先の出来事は目が回るようだった。パレードの最中に突然暴れまわる一頭のゾウ、取り押さえて処刑しようとする衛兵たち。それを見過ごすことができず、あろうことかシャー・ジャハーン皇帝の前に進み出て直談判を始めるアニー。
なによりも驚いたのはその結末。お咎めなしどころか、そのゾウを二人にくれるというのだ!
「今日のことは、皇帝陛下の特別のはからいです。陛下のお気が変わらないうちに、早く立ち去ってください。」
【春風】と名付けられたメスのゾウは二人を乗せると、勢いよく外に走り出していった。

春風はその名前に反して、まるで暴風のように突っ走っていた。自分のふるさとを目指し、足下の人々など気にしないかのように、すべてをなぎ倒しながら。市場の屋台を、村の家壁をその太い足で踏みつけ、壊しながら突き進んでいく。怒り狂う商人たちも、荒れ狂う春風を止めることはできなかった。
村を抜けて草原を突っ切り、ジャングルの入り口まで来たところで春風はようやく止まった。大きく嘶いて、二人を振り落とすと―そのままジャングルの奥へと消えていった。


ジャックは腰をさすりながら吹っ飛ばされたバッグを回収した。バッグの口は空いていて、中のものが周りに散乱している。魔法の秘薬とか、大切なものは一通りあったけど…肝心のエメラルドがない!
必死になって草原を探し回ると、アニーが日の光を反射して光るエメラルドを見つけた。ほっとして取りに行こうとするけど……なにかがおかしい。茶色い地面がかすかに上下している。それはとぐろを巻いていて、黄色い縞模様が―
「黄色いしまもようの大蛇といえば……キ、キ、キングコブラだ!!」
そう、エメラルドがあったのは体長3~4メートルのキングコブラの巣。その宝石のそばで、猛毒を持つキングコブラのメスが、卵を守って眠っているのだ!!

「キングコブラに、魔法の秘薬を飲ませられたらいいのに。ミミズくらい小さくなってくれれば、そのあいだに、エメラルドをひろえるのに…」
アニーがつぶやく。それを聞いたジャックははっとした。
「アニー、その手があるじゃないか!」
「え?キングコブラに魔法の秘薬を飲ませるの?」
「ちがうよ。ぼくたちが小さくなるんだよ」
「わたしたちが?」
「キングコブラは、音が聞こえないから、ぼくたちが小さくなれば、たぶん気づかれない」
「ふんふん」
「視力はいいけど、それは、姿が見えればっていうことだ。だから、見つからないようにかくれていけばいい」
「なるほど」
「できるだけそうっと近づけば、空気の振動だって少なくできるし……」
「そうね!」
そうと決まればやることは一つだ。小さくなってエメラルドを回収するまで、ざっと二十分。ジャックは小瓶のふたを開け、思い切ってふた口飲むと、それをアニーに手渡した。
そのとたん、頭がクラクラして、深い穴に落ちていくような感覚があって――


「お兄ちゃん、目を開けて。まわりを見て!」
「うわっ!」
目を開けたジャックは、驚いてひっくり返った。さっきまで足もとにあった草が、木のように大きい。
「こ、こんなに小さくなるとは思わなかったよ!」
立ち上がって見ると、着ている服もバックも、みんな小さくなっている。身長およそ10センチってとこかな。
小さくなって見るジャングルは、様々な音にあふれていた。地面が近くなったぶん、これまで気づかなかった自然の営みが、ダイナミックに迫ってくる。野草の花が、美しい大輪の花に見える。木の実が巨大なスイカのようだ。
虫が苦手なアニーが巨大なコオロギに驚いたり、チョウやハチと少しの間戯れたりしていたけど…こんなことをしている場合じゃない。もとの大きさに戻らないうちに、エメラルドを取り戻さなくちゃ。

ジャックとアニーは、林のような草を分け、じゅうたんのように大きな枯れ葉をふみ、大木の幹のようなキノコをよけながら、進んでいった。石や木の根は小山をよじ登るようにして乗りこえた。大きな石や水たまりは、ぐるりとまわっていかなければならなかった。
二人はようやく日の当たる場所の近くまでやってきて、枯れ葉の間に光るエメラルドを見つけた。…のだけれど、ジャックはここで誤算に気づいた。さっきまで"小さな宝石"だったエメラルドが、いまは、バスケットボールほどの大きさに見える。
そればかりか、とぐろを巻くキングコブラは、まるで、ファンタジー映画に出てくる巨大なドラゴンのようだ!
二人は自分たちの身体をツタの葉っぱでカモフラージュして、すこしずつコブラに近づいていく。コブラは動くものに敏感だ。葉っぱのふりをして、ゆっくり、ゆっくり…
二人は緊張しながらもどうにかエメラルドを回収し、再びその場から離れようとする。なんとか無事に逃げられそうだ、と思ったそのときだった。
―ふたりの背後で、シシシューーーッ!と気味の悪い音が聞こえた。

ふり返ると、目の前に、うす黄色の壁のようなものが立ちあがっていた。それは、かま首をもたげた、巨大なキングコブラの胸だった。
目をあげると、ぱっくりと開いたコブラの口から、するどい剣のような牙がのぞいている。
「パ、パ、パ、パパコブラ……」
と、そのとき、前からも別の声がした。
シシシューーーッ!
向きなおると、眠っていたはずのママコブラも、かま首を持ち上げている。
ふたりは、二匹のキングコブラに、はさみうちにされてしまった。
二匹のキングコブラが、声を上げる。
シャアァァーーーッ!
「逃げろおっ!!」
一目散に逃げる二人。背丈よりも高い草をかき分け、丸太のような枝を飛び越えて。
ジャックも夢中で走る。だが、小さなからだでは、アリが逃げまどうようなものだ。それに、バッグに入れたエメラルドが重い!
コオロギやカブトムシが、あわてて草むらに逃げこんでいった。
キリキリ……、カッカッ……、シャカシャカ……、ズルズル……
ジャングルじゅうの音が、『コブラがすぐうしろに迫っているぞ!』と、ジャックに警告していた。

そのうち、足がもつれて、草の上に倒れこんでしまった。あわててふり返る。あたりを見回してもコブラはいない。
…それどころか、いっしょに逃げていたはずのアニーもいない!
(まさか、コブラは、アニーを追っていったんじゃ……)

アニー!どこだ、アニー!!

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