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リアリティの尺度②

「猫だけが知っている」・ソードワールドRPGシナリオ集⑥

「猫だけが知っている」/山本弘

 クラモンの依頼からしばらく経ったある夜のこと。ベルダインの街を歩いていた冒険者一行がチャ=ザ神殿近くの通りを横切ったとき、突然酔っ払いが悲鳴を上げて飛び出してきた。「怪物が出た…ばかでかい真っ黒な猫の化物だ!」驚いた冒険者が神殿の裏門を見ると、そこには裸の女性が倒れていた。背中には爪でえぐられたような傷跡、降り積もる雪の上には一つの足跡しかない。不可解な状況に首を傾げながらもチャ=ザ神殿で彼女を介抱した一行は、彼女―クラモンの手伝いをしているジェシカという娘らしい―の言葉から、ジェシカの兄・ライルを訪ねることとなる。
 ライルという青年―クラモンの弟子の魔術師であるようだ―を訪ねてジェシカの大怪我を知らせると、彼は青ざめた顔で神殿に駆けつける。ライルはジェシカとしばし話し合った後、ジェシカの姉でライルのもう一人の妹・セリアの様子を見てきて欲しいと冒険者に依頼する。最近の彼女は様子がおかしく、『黒い大きな猫のような怪物』に怯えているとのことだ…冒険者一行がセリアの泊まっている『牢獄亭』に向かい、店の主人に鍵を借りて部屋に入ると、そこに探しているセリアがいた―全裸のままシーツで首を吊った死体として、だが。牢獄亭の名前の通り窓には鉄格子が嵌められており、出入口は一つしかない。テーブルにあったセリアの遺書から、衛視のフォークは自殺を疑うが…?
 冒険者が聞き込みを続けるにつれ、新たな謎が次々と浮かんでくる。食い違う町の人の証言。セリアの死体に残っていた手足の痣。現場に残されていた籐のバスケットと糸。事件のあったときに牢獄亭の窓の下から逃げていった黒い猫と、そこで見つけたごく小さな血痕…はたして黒猫の怪物とは何なのか?セリアは本当に自殺だったのか?
 そして冒険者が兄妹の雇い主であるクラモン老人に聞き込みを行ったとき、ある違和感を感じる。まるでクラモンが必要以上にジェシカに肩入れしているような。さらに暫く経った後、今度は執事のベイカーが冒険者達を訪ねてきた。なんでも、ピクシー・メイカーとその解毒剤が2つずつ倉庫から無くなっているとのことだが…
 
 前エントリに続くシナリオで、このシナリオをプレイするためには冒険者達が「とっても小さな大仕事」を終えている必要がある。プレイヤーは冒険者として事件を目撃し、ゲームマスターが断片的に与えるヒントから事件の真相を暴くことが目的となる。いわばホラー・サスペンス仕立ての推理シナリオであり、基本的に戦闘は発生しない。ただしその性質上、「センス・イービル」や「センス・ライ」を使える者はこのシナリオに参加できない。あと、ホントはジェシカ襲撃とセリアの死以外にもいくつかイベントが発生するんだけど、今回はカット。
 セリアの死亡状況はどう見ても密室殺人だが、それはあくまでも現実世界の話。数々の魔法とピクシー・メイカーという薬が存在するソードワールド世界のリアリティを基準に考えると、事件の全貌が見えてくるはずだ。上のあらすじだけだと必要な証拠が完全に提示されていないけど…

 以降は事件のネタばらし。その性質上改変の難しいシナリオなので、プレイに興味を持った人は読まないほうがいい。
 セリア殺害の犯人はジェシカとライルの共犯。ジェシカとセリアは本当の姉妹だが、ライルはジェシカと恋仲であり血は全く繋がっていない。ジェシカはクラモンに取り入り、ライルと共謀して財産の乗っ取りを企んでいたところ、二人を追ってきたセリアに計画がばれたため殺害した。それぞれの詳しい背景はシナリオ集を読めば分かるので省きます。

 殺害のトリックは次の通り。ライルが「スリープ・クラウド」でセリアを眠らせてから、ジェシカがクラモンのもとへと走りピクシー・メイカーと解毒薬を盗んでくる。戻ってきたジェシカはピクシーメイカーでセリアを小さくした後に手足を麻紐で縛りバスケットへと入れた後、偽の遺書を用意した後でバスケットを持ちセリアの服を着て牢獄亭へ。セリアに成りすましたジェシカは牢獄亭のセリアの部屋に入って鍵をかけた後、天井からシーツを吊り先端に輪を作ってから小さいままのセリアの首に通す。そこで眠っているセリアに解毒剤を飲ませた途端、セリアは元の大きさに戻ると同時に首が絞まって死亡した。
 セリアを殺害したジェシカは着ていたセリアの服をすべて脱ぎ、鉄格子に糸を結びつけた上でもう一つのピクシー・メイカーを飲んで小さくなる。ピクシー・メイカーの空き瓶は窓の外に捨て、自分も鉄格子の隙間から外に出て糸を伝い降りる。窓の外にはライルが待ち構えており、ジェシカと糸を回収すれば完全犯罪が成立するはずだった。
 ところが、ジェシカが降りてくるタイミングでライルが客引きに捕まり、しかも降りてきたところを牢獄亭付近に出没する野良猫に襲われた。ライルが戻ってきたときにはジェシカは既に瀕死の重傷で、急いで家に連れて帰る。だがジェシカの傷を説明できないことに気付き、再びジェシカを抱えてチャ=ザ神殿の裏へ。偽装工作の後に解毒剤を飲ませてジェシカを元の大きさに戻した後、自分の靴を脱いで「クリエイト・イメージ」で通りがかった酔っ払いに巨大な猫の幻影を見せる。酔っ払いがいなくなった隙にライルは「レビテーション」でその場を離れ、様子を伺っている間に冒険者達が来たのでこっそり自宅へと戻り、ありもしない黒い猫の怪物の話を作り上げる…

ファンタジーの世界とはいえ、なかなかに凝ったトリックだ。プレイヤーは最終的にこのトリックを見破り二人を告発することが求められるが、あまりにも難しい場合はゲームマスターが衛視のフォークを通じてヒントが提示されたり、さらなる事件を起こして真相を分かりやすくする手筈までシナリオ集には記載されている。ロールプレイによる推理を徹底させた山本氏の技術の妙と言った所か。

今回はswとしても特殊な部類の話だと思うのだが、それを犯罪に絡めるという発想が面白かったので取り上げてみた。クラモンとピクシー・メイカーにまつわる話はこれでおしまい。
…と、思いきや、クラモンの話はさらに半回転する。次回は番外編。
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