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一滴の強烈なエッセンス

ゴックン!ぷーちょ/遠山えま

わたし、香坂まゆ12歳。家はカフェをやってるの。おかげで飲み物にはうるさいんだよね。
今日は中学校の入学式なんだ!!幼馴染のなずなといっしょにわくわくした気持ちで学校に向かうけど…
「まゆ、そういえば、天宮もおなじ中学だけど…平気?」
「へ…平気ってゆーか、ま、しょーがないよーっ」
天宮くんは小学校のとき、ずっとずっと好きだった人――…
2週間前、小学校の卒業式日に告白したんだけど…

「あの…天宮くん…わたしずっと天宮くんが…好きだったの」
「……キミ、だれだっけ?」

けっこうひどいフラれかたをしてしまったんだよね…
ううん、いいの。入学をさかいに彼のことスッパリ忘れるって決めたんだっ!!

…そう思って登校したのに。なのに。
なんで天宮くんととなりの席なわけーー!?
フラれる前は一回もおなじクラスになれなかったのに――…!
しかも緊張しながら挨拶したのに、目もあわせてくれないし…
も~~!!サイテーな中学生活のはじまりだよっ!!となりの席じゃ、わすれたくてもわすれられるわけないじゃん!

それで、その晩は家のカフェで(炭酸を)ヤケ飲みしてたんだ。思い出すのは天宮くんのことばかり。
…ずっと、彼のことだけを見てたんだ。小学一年生の入学式の日、優しくしてもらってから―
思わず涙がこぼれる。涙が手元のドリンクに落ちて―
…あれ?このジュース、こんな色してたっけ?キレイな七色…カフェの新作なのかも?
まあ、なんでもいいか。ヤケ飲みだ!新しい生活にカンパイよーー!!
って飲み干したけど、なにこれ!?マズーーッ!うええ…ほんっとついて……ない…

!?

な、なに!?目の前に何かいる!2頭身の人形みたいな…え、動いた!?
「オイラのジュース飲んだな~~」
「ひぃああああ~~っ!!」
な、なにこれ…?
「オイラは飲み物に宿る精霊、ぷーちょさまだ!オイラたちドリンクの精霊はな、ドリンクがたくさんあって大事にされているところに生まれてその店を手伝うんだ」
なんかエラソーに解説始めてるし…
「そして実力のある精霊は七色のジュースの『素』がもらえて、それを完成させて飲めば特別な力が使える『おとな』になるコトができるのさ。オイラも、やっと『人間の涙』を入れて完成させたのに…さきに飲まれるなんて…」

…って、なに信じてんの!?精霊なんているわけないっ!!夢よ!幻覚よ!!
そ…そーだっ!!つめたい牛乳でも飲もう!!そしたら、きっと目ェ覚める!!
「オイッ!!なにかってに飲もーとしてんだ!!」
こんな夢っ…はやく、覚めろっ!!!

ゴト…ズズズズズ…ミシ…

……あれっ?なんか…身動きが…とれな…い…
………なにコレェーーッ!!体が大きくなってる!?
さっきの牛乳ビンはちまっこくなってるし、座ったままでもカフェの天井に頭がつくし…!?
「いやーー牛乳飲んだら大きくなるっていうしね!」
あはははは、とぷーちょ?がわたしの耳元をふわふわ飛びながら笑ってるけど…
「いやぁぁぁ~~ッ!!!だれかたすけてーーっ!!ママーーっ!!!」
「ったく…しょーがないな――ぷっぷくぷーちょっ!!」「きゃっ!!」
ぷーちょが呪文を唱えると、体を光が包んで…(ボンッ)
…あっ…もどった…
「いまのでわかっただろ?七色のジュースの特別な力が!七色のジュースには水以外の飲み物を飲むと、その種類によって体を変身させる効果がある…」
えーーーっ!
「とにかくっ!!むやみに変身しないように、水以外のもの、飲むなよっ!!」

―次の日からぷーちょは学校にもついてくることになった。もしも変身したら、ぷーちょしか変身とけないみたいだし…幸い普通の人にはぷーちょは見えないみたい―それってだれにも相談できないってことじゃん!!
しかもいざ中学校に行ってみたら、天宮くんは昔と違ってすごい冷血人間になってた!しかもしかも、みんなの前でわたしをふったことバラされるし…
もう、本当にサイアク…


でもそれから。水道水を飲んで透明人間になって、天宮くんの家に忍び込んだり。そのまま勝手にぷーちょに変身を解かれて、ケンカになったり。ぷーちょがそのまま出て行ったり。
それでぷーちょが居なくなったせいでカフェでおいしい飲み物が作れなくなって。朝食の豚汁を飲んだら、今度はブタに変身したり。ブタの姿になってちょっとだけぷーちょの気持ちが分かって、水に戻ろうとしてたぷーちょを助けようとして…こんどはわたしがぷーちょごと天宮くんに助けられて!?

だけど。トラブル続きのそんな中で、天宮くんへのあきらめたはずの思いを再認識したら…わたしの頭の上に天使の輪が現れて、そこからピンクのしずくが!?
「これ…もしかして七色のジュースのピンクのしずくじゃないか!!好きって気持ちで外にでるって本当だったんだ!!」
「じゃあ、七色ぜんぶ集めたら…」
「七色のジュースが完成しておとなになれるんだ!!」
わ、わたしの好きって気持ちで七色のジュースが完成するの!?
「そーと決まれば…ぜったい両思いにしてやるからなーー!!!」
「はいーーっ!?」


第2巻 DRINK#9 わたすぞ!プレゼント

きょう12月24日はクリスマスイブ、そして大好きな天宮くんのバースデー…
この日のために、一ヶ月かけてマフラーを編んでいたの。ようやく…ようやくできたーーっ!!
「でも、どーやってわたすんだ?」
「それは…コレよっ!!」
「招待状…?ハッ、このゾウは!!」

そう、今日は超・お金持ちの転校生、柊 このはちゃんの家でクリスマスパーティが開かれるの!
「…ってアホーーッ!!なに、ライバルの家に遊びに来てるんじゃワレーーっ!!!」
「だって…天宮くんもきてるらしーし…いいかなーって」
「おまえに、プライドはないのかーーッ!!!」
そうなんだ。柊さんも天宮くんのことが好きで、人目を気にせず手段を選ばず、猛アタックを仕掛けてる。しかも、天宮くんとは幼馴染みたいで…
ううん、それでもいいの。今日この場に来ている天宮くんに、このマフラーを渡せればそれで…

すっごい人ごみの中、たまたま会ったなずなのおかげで(なんかすっごい挙動不審だったけど)、奇跡的に天宮くんと二人っきりになれて―
「で…なんか用?」
よ…よしっ!!
「あの…天宮くん…お誕生日おめでとう。それで…あの…わたしたいものがあるんだけど…」「ちょっと失礼、ホットミルクでもいかがですかな?」
……は?あ…どうも…っていまの人、なにっ!?ムードぶちこわしーっ!
「オイ、まゆ!見てみろ!!」
ぷーちょの言う方向を見てみると…あっ…柊さんのしわざ!?
「さすがに敵の本拠地なだけあるな…てごわいぜ…」
「ど…どーしよォ…」
とりあえず、ウェイターさんに貰ったホットミルクを一口ゴクッっと…

……ゴクっ?
「ぎゃあああ~~っ、つい飲んじゃったよーーっ、わたしのバカーーッ!こんなとこで変身なんてっ…!!」
…と、思ったのだけど、特に体に異常は…
「……あ…あれ?なんともな…」「まーゆーー?」
いきなりの背後の声に振り返ると―なに!?二頭身のバケモノーーっ!?
思わず走り出すけど何かにぶつかってしまい、あわてて上を見ると…え、天宮くん?これ、天宮くんの足!?じゃあ、バケモノみたいなのは、ぷーちょ!?
あ…わたし…ちいさくなってるーー!!

「なるヘソ~~つめたい牛乳んときは大きくなったからその反対ってわけか」
「ぷーちょっ、そんなことよりっ」
はやく変身といて…と言おうとしたんだけど。わたしの体はいきなり、誰かに持ち上げられた!

「なんだよ、コレ…香坂の…人形…?似すぎ…」
天宮くんっ!?これじゃ、変身とけないよーーっ!ばれないように人形のフリしなきゃっ!!
「もしかして、さっきのわたしたいものってコレか…?ん?カード?」
しかもさっきの状況と、わたしが居たところに残されていたカードでこの人形がわたしからのプレゼントだと勘違いしたみたいで…え、あのカード、「毎日使って」とか書いてたんだけど、マフラーって書いていなかったような!?
「毎日…使う…?」

わたしも天宮くんも凍り付いていると―2階のフロアにいた柊さんが手元のひもをグイッと引いた。
すると突如として天宮くんの足元の床が開いて、そのままわたしを握って落ちていった!…柊さんの自室へ。
「天宮くん…おまちしておりましたわ」
そこにいたのはやっぱり柊さん。わざわざこんな真似をしてまでクリスマスプレゼントを用意したなんて…
でも柊さんが用意したプレゼントというのは、巨大なケーキとか自分の写真集とか、やたらとズレたものばかり。
さすがの天宮くんもいらないみたい…

「じゃあ…代わりに…このはのキスをプレゼントしますわね。さ、もらってください」「は?ちょっ…」
こっ…こんなの…ダメ――
―ちゅ、と柊さんがキスしたのは…わたし。す、捨て身だけどなんとかなった…
「キャーーッ!!なんですの!?香坂さんの人形!!ふ、不吉ですわ!!」
「…おまえには関係ねーだろ。それより、はやくどけよ」

でもね。天宮くんの手に握られているわたしの人形(じゃないんだけど)を見つめていた柊さんは、急に真剣な表情になってこんなことを言い出したんだ。
「香坂さん…きっと、おどろきますよね。天宮くんにも、初恋があったなんて知ったら」
えっ?天宮くんの…初恋?
「しかもその相手が、わたしだってわかったら…どんな顔するのかしら」

「…むかしのことあんまいうなよ。」
天宮くんがそう言って立ち上がる。
「あれ、人形が…」
でもそのときには、わたしの人形は―わたしはもうそこにはいなかった。
少女マンガに限らず、ありとあらゆる要素が目新しいもので構成されている作品というのはあまり多くない。むしろ大抵の作品は、いくつかの一般的なプロットを下敷きにした上で、そこに+αの独自のエッセンスを加えることでオリジナリティを出しているものが多いように思う。
遠山えま 氏はこの+αのエッセンスの扱いが非常に巧みな漫画家で、馴染みやすい世界観なのにいままで無かったタイプのストーリーを生み出すことに長けているようで、2014年現在においても非常に精力的に活動なさっている方だ。「ぽちゃぽちゃ水泳部」の作者と言えば、分かる人にはわかるだろうか。

「ゴックン!ぷーちょ」は同氏の初の単行本だが、ベースとなっている要素はごくありふれたものだ。恋のライバルが「容姿端麗・文武両道だけど性格が悪く手段を選ばないお金持ちのお嬢様」という設定なんて、もはや絶滅危惧種みたいなものだよ…
女子中学生の主人公の片思いを成就させるため、ほかの人には見えない精霊の手助けで意中の彼を振り向かせる、脱・片思いストーリー。こう書くと、いかにもありそうな話に見えるのだが、ここで「変身」というエッセンスを加えることによって新鮮味のあるラブコメとして成立している。…というか、変身ネタにフォーカスを当てた少女マンガってほとんど無いんじゃないだろうか。

変身のシステムも面白いもので、「ドリンクを飲むと、そのドリンクに応じた変化が起こり」、「ぷーちょの魔法で変身が解ける」というものだ。つまり変身も解除も完全に自律制御できるものではなく、結構な頻度でハプニングによって変身してしまい、その影響でストーリーが進むという仕組み。上手い。
この能力ひとつでいくつものシチュエーションが生み出せそうなものだが、あくまで意中の相手を射止めることに目的を絞っているため話の軸がぶれることもなく、とても読みやすいストーリーだと感じた。
…まあ、「水道水以外のドリンクで」って言ってる割に、第1話からいきなり水道水で透明人間に変身するけどね。

swものとしてはいわゆるunawareに分類されるシチュになるだろうか。
人形として振舞うしかない状況下で変身を解くこともできないが、片思いの相手とは常に側にある。小さな世界でのトラブルやハプニングというシチュとはほとんど無関係だが、相手に自分のことを全く気付かれないままにプライベートな領域を垣間見る、「窃視」の要素が少なからず入っているようだ。
窃視のシチュは透明人間でも可能だが、人形としては認識されているという不安定さと、自由に行動できないという縛りがある点が違う、と、思う。
……ごめんなさい、自分でも何を言いたいのか分からなくなってきました…

とにかく今回は、主人公が本来知りえない「幼馴染同士の昔話」を知ってしまうというシチュを満たすために小さくなったような話だ。もちろん気付かれないとはいえ、香坂が天宮に人形として掴みあげられたり、そのままずっと天宮の側で保護されたりと乙女っぽいシチュも結構揃っているぞ。
ストーリーではこの後、精霊・ぷーちょに乗って雪の舞うクリスマスイブの空を飛ぶ場面がある。どういうわけか分からないけど、個人的にはこのシーンが一番グッと来た。


なお、全編通じて変身を扱ったマンガなのだが、その変身の解釈は結構広いようで、「素直になる・お姫様になる」といった内面の変化や「忍者になる・運動能力が向上する」といった能力的な変化、「天宮の彼女になる・やたらとモテる」といった状況の変化に至るまで、全部ドリンクによる変身で片付けているみたい。案外なんでもアリだな。
実際に肉体が変化するものだと、あらすじに挙げた以外には「男性化・成人化・動物化」などなど。特に、男性化(TS)と成人化(AP)はなかなか良い出来。

…え、小人化が一番印象薄い?それは言いっこ無しデスよ。
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